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可変バルブ機構

可変バルブ機構(かへんバルブきこう)は、レシプロエンジンにおいて吸気、排気のバルブタイミング、一部のバルブの作動を休止する機構である。

目次

概要

レシプロエンジンでは、効率の良い吸排気を行うには、ピストンの移動速度(エンジン回転)と吸排気の気体の流速に合わせて、バルブの開閉を制御する必要がある。

吸気行程ではピストンが下降を始めると同時に吸気バルブを開き始め、吸気流速を早く立ち上げさせる必要がある。また、吸気行程が終わってピストンが上昇し始めて圧縮行程に入っても、吸気流速が高い場合は気体(吸気)自体により大きな慣性力が働くため、吸気バルブを遅く閉じた方が充填効率が上がる。

排気行程では燃焼圧力によってピストンが押し下げられている途中の爆発行程でも、排気バルブを早く開き始めた方が排気流速が早く立ち上がるため効率が良い。また、排気行程が終わりピストンが降下し始めて吸気行程に移っても、排気の流速に応じて排気バルブを開いていた方が効率が良い。

今までは、ある一定の回転数に合わせた効率の良いバルブタイミングを設定し、その前後の回転域での効率を犠牲とせざるを得なかった。それを、バルブタイミングを可変にすることによって、エンジン特性を回転数に応じて変えていくのが可変バルブタイミング機構である。

エンジン特性を変える別の方法としては、吸排気の気体流速を変える可変インテークマニホールドなどがあり、これに可変バルブ機構を使って吸気バルブ・排気バルブのそれぞれの片側を閉じ、気体流速を変化させる。給排気バルブを全て閉じ、稼動するシリンダーの数を変化させる気筒休止エンジンにも可変バルブ機構が用いられている。

バリエーション

1カム・タイプ(カム作用角固定型)

位相変化型(タイミング可変・リフト固定)
クランクシャフトに対する進角・遅角をカムシャフトに持たせることで、バルブタイミングを変化させる。
長所 - 初期は段階的に切り替えるのみだったが、連続可変型とすることで、出力特性を緩やかに変化させられる。ロッカーアームが無い直押し式でも使える。
短所 - カム作用角(バルブ開角度)は一定なので、オーバーラップを少なくするために遅角を持たせると、吸気バルブの閉じも遅くなり、吸気を押し戻してしまう。
採用例 - 数多くのメーカーが採用している。
バルブ片閉じ型(タイミング・リフト固定)
吸気バルブ、排気バルブのそれぞれの片側を閉じる。直押し式に油圧バルブリフターによって採用されている。
長所 - 低回転時に吸気流速を高め、充填効率を上げられる。シリンダー内にスワールを発生させる。
短所 - バルブタイミングは変化しないので、効果も少ない。
採用例 - ホンダREVや、HYPER-VTECなど、主にオートバイに採用されている。
気筒休止型(タイミング・リフト固定)
気筒停止に用いられる。吸排気バルブを閉じることによって低負荷時の効率を高める目的で使用される。
長所 - 排気量を変化させることができ、出力を抑えることで、必要とされる出力が小さい時には燃費的に有利である。
短所 - 停止中の振動や、停止時の出力変化などが問題とされる。
採用例 - キャディラックへの採用が初とされる。日本初は三菱MDエンジン1,400ccSOHCである。

複数カム切り替えタイプ(カム作用角可変型)

カム切り替え型(タイミング・リフト可変)
低回転、高回転で2種類のカムを使い分ける。
長所 - カムの開角度の違う2種類のカムを使い分けるので、高回転時などは寄り効果が大きい。
短所 - 切り替えポイント付近に出力の谷間ができてしまう。
採用例 - ホンダのVTEC、三菱のMIVECなどに採用されている。
カム切り替え・位相変化型(タイミング・リフト可変)
2種類のカムを持つカムシャフトを、低回転時に位相制御する。
長所 - カム切り替え式の短所である、出力変化を緩やかにできる。
短所 - バルブトロニックのようにバルブリフトを連続変化させることができない。
採用例 - ホンダのi-VTECに採用されている。
カム切り替え・バルブ片閉じ型(タイミング・リフト可変)
低回転時に片側のバルブを閉じ、高回転では両バルブを開き、さらに2種類のカムを使い分ける。
短所 - 出力に段差ができてしまう。
採用例 - ホンダの3ステージVTEC、三菱のシリウスDASH3×2に採用された。
カム切り替え・気筒休止型(タイミング・リフト可変)
低負荷時に気筒停止し、高回転ではカムを切り替える。
長所 - 気筒停止することにより燃費を改善させられるほか、ハイブリッドではエネルギー回生効率が上がる。さらにカムを切り替えることにより、高回転での出力特性にも優れる。
短所 - 2種類のカムを切り替えるだけなので、出力に段差が出る。
採用例 - 三菱のMIVEC-MD、ホンダのシビックハイブリッド用VTECなどに採用。

1カム・タイプ(レバー比・カム作用角可変型)

バルブリフト連続可変・位相変化型(タイミング・リフト可変)
ロッカーアームのレバー比を変化させて、バルブリフトを連続変化させる。VANOSで位相変化させる。
長所 - スロットルバルブの代わりに出力制御を行うことができる。リフト量を小さくするとカム作用角(バルブ開角度)も小さくなり、カム位相でバルブタイミング、バルブリフトを自由に変化させることができる。
短所 - 構造が複雑で、動弁系の重量が大きくなる。新型直列6気筒ガソリン直噴には、インジェクターが邪魔になり採用されなかった。
採用例 - BMWのバルブトロニックで直列4気筒、からV型12気筒+ガソリン直噴まで、幅広く採用されている。

歴史

最初の可変バルブタイミング機構(Variable Valve Timing、略称VVT)の実験はGMによって行われた。排気ガスを減少させるために吸気バルブによってスロットル制御を行うことが目的で、これは低負荷時にバルブリフトを減少させて吸気速度を高く保ち、それによる混合気の細分化を狙っていた。しかし低バルブリフトにおける制御には課題も多く、最終的にGMはプロジェクトを放棄した。

最初の実用的なバルブリフトを変化させる可変バルブタイミング機構はフィアットによって開発された。Giovanni Torazzaにより1970年代に開発されたシステムは、カムフォロワーの支点を油圧で変えるものだった。油圧はエンジンの回転数と吸気圧によって変えられた。

  • アルファ・ロメオが位相可変型の可変バルブを採用。
  • 1982年に三菱が、気筒休止エンジン機構を採用
  • 1984年に三菱が、シリウスDASH3×2を採用
  • 1986年日産が位相可変型のNVCSを採用。
  • 1989年にホンダがカム乗換による可変バルブタイミングリフト機構、VTECを採用。

各社の名称

  • VTECi-VTEC、VTEC-E - 本田技研工業における名称。各種のバリエーションが存在する。
  • MIVEC - 三菱自動車における総称。各種のバリエーションが存在すが、記号などでの分類表記はされて無い。
  • AVCS - 富士重工業における名称。
  • NVCS、CVTC、eVTC、NEO VVL、VVEL 、VEL- 日産自動車における名称。
  • VVT-i、VVTL-i、VVT-iE、VALVEMATIC - トヨタ自動車における名称。
  • VVT、VC - スズキにおける名称。前者は主に自動車、後者はオートバイに使用される。
  • DVVT - ダイハツ工業における名称。
  • S-VT - マツダにおける名称。
  • バリオカム、バリオカムプラス - ポルシェにおける名称。
  • VANOS、バルブトロニック - BMWにおける名称。バルブトロニックはVANOSと同時に使用される。
  • VTC - 日立製作所(旧ユニシア、日立に吸収された)における名称。連続位相可変型である。ホンダ、日産に採用される。
[ 可変バルブ機構 ]の改訂履歴 出典: 『ウィキペディア(Wikipedia)』
Text is available under GNU Free Documentation License.

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